Vol.44
夕方のまちにお囃子の音が響いてくる秋。
毎年迎えるハレの日に、今年も心が逸る。
川越の非日常へ、ようこそ。
表紙:「川越まつり」(撮影:小松正樹)/ 写真:小松正樹 / 編集:櫻井理恵 / デザイン:吉野博之
川越まつり──ハレとケハレとケ
発行:2024年09月
江戸の天下祭りの様式を今に伝える川越まつりは、三百七十年以上の歴史を誇る川越の代表的な行事だ。川越氷川神社の例大祭を根源とし、直後に行われる神幸祭、山車行事から成り立っている。慶安元年(一六四八)に川越藩主の松平伊豆守信綱が氷川神社に神輿や獅子頭等を寄進し、祭礼を奨励したことから始まったこの祭りは、「川越氷川祭の山車行事」として平成一七年に国指定重要無形民俗文化財に、そして平成二八年にはユネスコ無形文化遺産「山・鉾・屋台行事」に登録されている。
絢爛豪華な山車は二重鉾で高さは約八メートル、重さは三〜四トン。各町ごとに神話に出てくる神様や伝説の人物の人形が飾られ、川越市内を曳行する。
川越まつり初日の朝は各町内に一番太鼓が響き渡り、その特別な二日間が始まる。代々続く揃いの衣装、職方が黙々と山車を扱うその後ろ姿、煌びやかな手古舞の衣装を着て、少しすました顔の子どもたち。変わらないこの風景を受け継ぎ、未来へ想いをつなぐ特別な二日間が、今年もやってくる。